会社法180条に規定された種類株式のうち配当優先株式について、要点を整理してコンパクトに解説します。
会社法の条文と配当優先株式の位置づけ
種類株式についての条文を一部引用します。
- 会社法108条1項各号に列挙された事項について、普通株式とは異なる定めをした株式=「種類株式」
- 種類株式のうち、「剰余金の配当」(1号)や「残余財産の分配」(2号)について普通株式よりも優先的な定めをした株式=「優先株式」
- 優先株式のうち、「剰余金の配当」(1号)について普通株式よりも優先的な定めをした株式=「配当優先株式」
配当優先株式のバリエーション
参加的配当優先株式・非参加的配当優先株式
普通株式への配当よりも優先的に所定の配当を受けた後でなお配当金が残っている場合に、追加で配当を受けることができるかどうかによって分類されます。
- 残った配当金についても普通株式と同様に配当を受けることができる=「参加的」配当優先株式
- 残った配当金については配当を受けることができない=「非参加的」配当優先株式
累積的配当優先株式・非累積的配当優先株式
ある期の配当金が所定の優先的な配当に満たなかった場合、翌期以降にその不足分を繰り越して配当を受けることができるかどうかによって分類されます。
- 不足分を繰り越して(累積させて)翌期以降にその不足分の配当を受けることができる=「累積的」配当優先株式
- 不足分は繰り越さず翌期以降にその不足分の配当を受けることができない=「非累積的」配当優先株式
様々な組み合わせ
これら2つの分類方法の組み合わせも可能です。
たとえば「非参加的(かつ)累積的」配当優先株式の場合、会社の業績が良く配当金が多い場合でも残った配当金については配当を受けることができませんが(非参加的)、その一方で、会社の業績が悪く配当金が少ない場合には不足分を繰り越して翌期以降にその不足分の配当を受けることができます(累積的)。すなわち、会社の業績にかかわらず配当額の振れ幅が小さくなるという特徴を持たせることができます。
また、他の種類株式との組み合わせも可能です。
たとえば会社法108条1項3号の議決権制限株式と組み合わせれば、一定の議決権を制限する代償として配当を優先させるなど、会社と株主双方の利点を酌み資金調達の機会を広げることができます。